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Sportsmedicine No.60 May, 2004
月刊スポーツメディスン 5月号 通巻60号
A4変型判 52頁 中綴じ 定価1,100円(1,000円+税) クリアランスセール特価550円(500円+税)[品切れ]
年間購読料11,000円(10,000円+税)
■特集 健康づくりとまちづくり医科学、運動指導などそれぞれの立場からのアプローチ
1.WHO での仕事と「まちづくり」−−国際機関で働く意義
神田 知・WHO 世界保健機関健康開発総合センター
2.園芸療法+東洋医学、五感を刺激する庭園−−千葉大学「環境健康フィールド科学センター」の試み
古在豊樹・同センター長、千葉大学園芸学部
3.健康づくりはまちづくり−−整形外科医としての関わり
柏口新二・NPO 法人徳島みらいネットワーク副理事長、独立行政法人国立病院機構徳島病院スポーツ医学・整形外科
4.安心して暮らせるまちづくり
南 政樹・慶應義塾大学環境情報学部、内山映子・慶應義塾大学看護医療学部
5.高齢者介護予防・健康づくり事業への参加−−兵庫県稲美町「いきいきサロン」とチェアエクササイズ
竹尾吉枝・1億人元気運動協会
6.中高齢者対象の運動教室−−高齢社会の運動指導とまちづくり
岡本富俊・県立館山運動公園、石井麻知子・NPO 法人結いの会
■連載その他
Topic Scanning
「高齢者体力つくり支援士」制度の発足−−高齢者の運動指導資格
Body Work for Relaxation
気づきを通じたリラクセーション−−フェルデンクライスメソッドからのアプローチ
手の指の動き/緊張パターンを解放する/舌と喉
深沢悠二・IFF 公認インストラクター
Stretching and Training for Injury Prevention
障害予防のストレッチングとトレーニング 足首の内反・外反捻挫のメカニズムと予防法2
堀居 昭・日本体育大学
Sports Science Essay
「間」の考察から運動そのものへ−−ドイツの運動科学理論とともに 勝負における二律背反
木原資裕・鳴門教育大学
Sportsmedicine People Interview
メテディカル+アスレティック
沼倉たまき・京都地域医療学際研究所付属病院
Foam Roller Exercise Program
ペインクリニックでの痛みに対するフォームローラーエクササイズ
井村康志・藤田保健衛生大学病院東洋医学診療センター
Watch and Write!
スポーツの「芯」
釣りについて
山田ゆかり・スポーツライター
特集 健康づくりとまちづくり
このテーマはかなり以前から考えていた。常日頃お会いする人とまちづくりとの関係を考えていくうちに、その人たちの仕事を「まちづくり」というキーワードでまとめてみたいと思うようになっていた。
結論的に言うと、今月の取材はとても面白かった。「面白い」というと語弊があるが、「まちづくり」という観点を持つ人は、マクロな視点とミクロの視点の両方をきちんと備えている。当然、私事に留まらない。
まだ桜が美しい時期であった。
神田さん(P.6)とは実は神田さんが京都大学大学院のときに会っている。以来、神田さんはどんどん「居場所」を変え、今はWHO で仕事をされている。スポーツNPO サミットでもお会いしたが、なんだか別人のようでもあり、やはり神田さんでもあり、不思議な思いがあった。今回、改めて神戸で会い、国際機関での仕事ぶりを垣間見ることができた。もともとはアスレティックトレーナーを目指し、その資格も取得し、現在はWHO である。神田さんの話に、「国際機関で働く緊張感と使命感」という言葉が出てくる。その通りだと思う。特に「健康」に関わる国際機関である。SARS発生の震撼をどこまでリアリティを持って感じることができるか。イマジネーションはインテリジェンスと同じかもしれない。
ある日、某新聞の朝刊千葉版で古在先生(P.10)がこのセンターについて語っている記事を見た。食い入るように読み、早速Eメールで取材したい旨を伝えた。快く受けていただき、柏に出掛けた。千葉大学園芸学部の旧農場は広く、気持ちがよい。「対角線上」に進むと見える建物、歩いて7〜8分と言われ、ふかふかした土を踏みつつ、果樹を含めた樹木の間を進んでいった。真新しいセンターの前には「東洋医学診療所」の鉄骨が組み上がっていた。お話をうかがい、その建物から外に出て、これからどうなるのか説明を聞いた。清々しい風が吹いていた。今度来るときはもっと驚く風景になっているだろう。何より、古在先生がこの構想を楽しく話されるのを聞いていて楽しかった。きっと、ここから何かとても面白いものが誕生するだろう。またレボートしよう。
柏口先生(P.14)に、神戸から高速バスで徳島まで行きお会いした。神戸から徳島まではバスで約1時間半。近い。通勤圏とも言える距離である。いろいろなお話をうかがったが、スポーツドクターが地元でじっくり取り組んでいく姿が手に取るようにわかり、スポーツ医学が21世紀に入り、いったい何を見据えていくべきなのか、確信めいたものが出てくるようであった。さらに構想はふくらんでいるようで、次の取材が楽しみである。
藤沢市における南、内山先生(P.18)の「e-ケアタウンプロジェクト」については、妹尾さんに取材していただいた。ITはもうすでに生活に欠かせないというか、身の回りのどこにも存在している。「テクノロジーは、人の存在を不要とするものではなく、むしろ人にできることしかしない」という言葉にはハッとさせられるが、よくよく考えてみると、それもまた当然なのである。それでも、「IT」に違和感を抱く人は少なくない。その違和感はどこからくるのか。多分、まだITを扱う思想と実際の使用法にまだ溝があり、それが十分こなれていないのが原因ではないか。しかし、この「e-ケアタウンプロジェクト」を知ると、それも時間の問題だろうと思う。人ができること。それをもっときちんと考えればよいのだ。「人にできることしかしない」。ITはETではない。
竹尾さん(P.22)の1億人元気運動協会が兵庫県の稲美町で平成12年から取り組んできた「いきいきサロン」の話は、とても大事なことだと記事にして痛切に感じた。結局、現場でどうなのかが、健康づくり、まちづくりでは決して欠かせない、必ず戻るべき視点なのだ。稲美町の米澤さんも取材に快く応じていただき、その対話から、これならうまくいくだろうという印象を受けた。「世界で類をみないスピードの高齢化」と言われている。つまり、誰にもわからないことがたくさんあるのだ。互いに学び合うこと。その姿勢を忘れるわけにはいかない。それがこの21世紀のキーなのだろう。
岡本さんと石井さん(P.29)に会いに千葉県館山に行った。驚いたのは、運動公園での教室。みなさんのからだの柔らかいこと。また筋力もしっかりしている。簡単そうにみえる運動だが、ヤワなからだではできないのはすぐわかる。石井さんの言葉は鋭い。直球である。言葉に力がある。このボールを簡単に打ち返すことはできない。重さは思いから来る。こういう人が多くなるほど、日本はよくなる。心からそう思った。
連載その他
深沢先生(P.34)の2・3月合併号で文章に抜け落ちていた部分があり、それについては次号で補わさせていただく。堀居先生(P.38)は前号の続き。木原先生(P.42)もそうだが、二律背反の話は、奥深いものを感じる。分けられるものと思うのがいけないのかもしれない。沼倉さん(P.45)の話は今月の特集とも大いに関係する。井村先生(P.48)の方法はすぐに試してみたくなった。山田さん(P.50)の原稿は、きっと釣りの話ではないのだろうと思う。特集の話が長く、紙数が尽きた。また次号で。(清家)
訂正
前号のP.13図3で「モノアミノ酸」とあるのは「モノアミン」の誤り。58号P.12のパシフィックホスピタルの所在地で「神奈川県野比」とあるのは「神奈川県横須賀市野比」の誤り。同号P.17の上中央の写真説明で「マシンでの筋力トレーニング」とあるのは「徒手抵抗での」の誤りです。訂正してお詫びします。また、前号小谷さんの連載でレイアウト上不備がありました。詳しくは次号同連載で説明します。
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