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書籍

スポーツとトランスジェンダー
──スポーツ医科学、倫理・インテグリティの見地から


貞升 彩


B5判 約100頁 ペーパーバック
定価 2,200円(本体 2,000円+税)
ISBN 978-4-909011-57-2
2024年11月2日発売予定

トランスジェンダーアスリートを取り巻くさまざまな問題を、スポーツ医科学から、また倫理・インテグリティから考えるうえで基盤となる一冊。月刊スポーツメディスン連載を書籍化。


本書の特徴
・トランスジェンダーをめぐって生じたできごとをスポーツ医科学から考える
・適合治療やパフォーマンスの差についても取り上げる
・国際競技団体、国ごとによる対応の変化や、歴史的な経緯を追う
・世界的な潮流を踏まえ、これからの道を考える


目次

貞升 彩(著)

2,000円+税
ISBN 978-4-909011-57-2

はじめに
1 私がトランスジェンダー研究を始めたきっかけ
2 世界と日本におけるトランスジェンダーアスリート
3 スポーツにおけるトランスジェンダー課題とは何か
4 国際オリンピック委員会(IOC)によるトランスジェンダーポリシーの変遷、オリンピック憲章や国連との協調も踏まえて
5 男性と女性のフィジカルパフォーマンスの差、性別適合治療の影響
6 陸上競技の不正との闘いの歴史から、「性」を考える
7 英国との比較から検証 ── 日本はどこへ向かうべきか
8 東西冷戦時代にソ連で何かあったのか
9 スポーツにおけるピンクウォッシング
10 二極化する世界でどう進むか
11 終わりに:変革の時代



(「はじめに」をここに紹介いたします)


はじめに

 私が編集者の浅野将志氏から、月刊スポーツメディスンへの連載の依頼を受けたのは 2022 年 11 月で、LGBTQ + 関連でも大きな議論となった FIFA カタール W 杯が開幕する頃だった。ちょうどその時私はトランスジェンダーアスリート関連のカンファレンスに参加するためにロンドンのアパートに滞在していた。テーブルと机がない滞在先の部屋からソファに座ってオンラインで浅野氏と面会をした。スポーツ医学雑誌から執筆依頼(しかもー年間にわたる連載)をいただくこと自体が私には驚きであり、果たして一年間も書くことがあるだろうかと思ったものである。もともと考えごとをしながら知らない街をめぐるのが好きであり、滞在先の近所にあったサッカースタジアム周囲を散歩しながら、時にロンドンの街中に向かう赤いバスに揺られながら、時に手帖にメモをしてー年分のおおまかな構想を練った。そういえば、滞在先には三毛猫がおり、その三毛猫は滞在先の部屋にあるそのソファがお気に入りだった。ソファに座りながらペーパーワークをしていた私は滞在初日から全身に蕁麻疹を生じ、生まれて初めて自分が猫アレルギーを有していると自覚した。掻痒感に悩まされながら、そのソファに座り連載第一回をプロットした。時にそのソファに座り、大きなテレビでカタールW杯も観戦した。あのソファに今日も三毛猫はくるまっているのだろうかと、これを書きながらロンドンでのあの短い滞在が懐かしくなった。

 はてさて、話を元に戻すと、本書の第―章で書いたように、整形外科医の私がスポーツとトランスジェンダー含めた LGBTQ + に関して研究を行うには周囲から理解が得にくく、当初は大きな障壁があった。しかし、このように本書発行に至るまでになったのは、研究の重要性に理解をしてくださった千葉大学整形外科スポーツグループの先生方の理解があってこそである。まさに今、日本サッカー協会およびサッカー界のアクセスフォーオール政策に関わる方々には、日本サッカー界の LGBTQ + に関する政策策定に関わるという大変貴重な経験をさせていただいている。また過去に私たちが行った調査にご協力いただいたすべてのサッカーファミリーの皆様及び、サッカー界をよりよくするためにこれまでご尽力いただいた当事者の方々、支援団体の皆様にもここで感謝の意を表したい。

 本書が日本サッカー界のみならず、スポーツ界における LGBTQ + 理解増進とよりよいスポーツ環境づくりの一助となることを切に願う。